雑学界の権威・平林純の考える科学

 濡れた髪を素早く乾燥したい時の定番テクニックは、濡れた髪からタオルで水分をよく拭き取った後にドライヤーをあてる、吸水性の高い繊維を頭に巻きつつドライヤーをあてる、髪の根元から乾かすことで一旦乾かした箇所が再度濡れてしまうことがないようにする、といったところでしょうか。しかし、科学的計算によれば、髪を素早く乾かすことができる意外に効果的なテクニックが存在してるのです。…それは、指を開いた手を髪に差し込み、掌(てのひら)を素早く(ドライヤーの風を横切るように)左右に振りつつドライヤーの風をあてる、というものです。

 日本工業規格JIS9613(ヘヤドライヤ)によれば、ドライヤーは、吐出口から 30mm 離れた位置において70℃以上140℃以下の熱風が秒速5メートル以上の速度で吹き出すように作られています。といっても、髪にドライヤーの吹き出し口をあまり近づけると、髪の毛が100℃近くなり熱で変質してしまうので、現実的には15センチメートルくらい離れた箇所からドライヤーの風をあてるということになるでしょう(参考&右図:花王ヘアケアサイト)。すると、たとえば1200ワット程度のドライヤーでは、髪の毛の温度を80℃程度に抑えつつ乾燥させることができるようになります。

 15センチメートル離れたところからドライヤーで髪の毛に風をあてるとすると、秒速15メートルほどで熱風を吹き出すドライヤーの場合で、吹き出し口から15センチメートルくらい離れたところでは、熱風の風速はおおよそ秒速6メートル程度になります(参考&右図:ヘアドライヤーではないですが”HP162 ハンディタイプ包装機の(熱)風の吹き出し方を調べてみました”)。つまり、ドライヤーの吹き出し口での風速・温度が、15センチメートル離れたところでは大体半分になるという具合です。

 さて、指を開いた手を髪に差し込み、掌(てのひら)を素早く(ドライヤーの風を横切るように)左右に振るとどういうことが起きるでしょうか?掌を左右に高速でシェイクしてみると、大体20センチメートル程度の幅を秒6回程度で振ることができます。つまり往復で40センチメートルの距離を秒6回ということで、ドライヤーの風に対して(横切るように)秒速240センチメートルもの動きを髪の毛に与えることができます。この動きをドライヤーの風に加えてやると、秒速6メートルのドライヤーの風が秒速6.5メートル相当に変化します(風の向きに対して鉛直に振っているため、残念ながら6+2.5=8.5とはなりません)。

 そして、髪が約15グラムの水分を含んでいるものとして、温度80℃の熱風が①秒速6メートルで吹き付ける場合と②秒速6.5メートルで吹き付ける場合の乾燥時間をシミュレーションしてやると、前者が1分40秒(100秒)、後者は1分36.5秒(96.5秒)で髪の毛が乾くという結果になります。つまり、3.5秒ほど速く髪の毛を乾燥させることができる、というわけです。パーセンテージに直すと、乾燥時間を約4パーセント時間を短くすることができるのです。ということは、髪の毛が長くてドライヤーを5分(300秒)使っている人であれば、一回あたり12秒短くすることができる、…さらに1年365日あたりにすると、12×365=4380秒=73分=1時間13分も時間を有意義に使うことができる、というわけです。

 指を高速にプルプルと震わせるたけで、濡れた髪を素早く乾かすことができる!?(計算上はそうなるはず)という㊙テクニック、試してみるのはいかがでしょうか? 

 「使用比率が多い文字でインク使用量の少ないフォントを使えば、印刷代金を安くすることができるよ!」という米国14歳少年の研究(「フォント変えれば数百万ドルの節約に、米14歳が政府に提言」)がありました。「英語で頻繁に使用される5文字(e、t、a、o、r)に着目し、4つの書体で各文字に使用されるインクの量を調べて頻度を眺めてみたら、ガラモン・フォントを使えばインク消費量が大幅に減るということがわかったよ!」というものです。

 この自由研究が面白かったので、日本語フォントならどうなるかを大雑把に調べてみました。 やってみたことは、常用漢字に入っている1715文字を

  1.  ・ヒラギノ明朝 Pro W3
  2.  ・小塚明朝 Pr6N R
  3.  ・MS 明朝

で出力して、各フォントで「各文字に使用されるインクの量を調べて、各フォントでの”インク使用量”の頻度分布を描いてみた」のです。その結果が、右に貼り付けたヒストグラムです。横軸が”インク使用量”に相当して(注意!このグラフは、白画素数を数えているので、横軸右側がインク消費量が少なく、横軸左側がインク消費量が多いというものです)、縦軸が(横軸の”インク使用量”になるような)文字が各フォントでどれだけあるか、を示しています。緑色が”ヒラギノ明朝 Pro W3”で、青色が”小塚明朝 Pr6N R”、そして、オレンジ色が”MS 明朝”です。14歳少年の研究のような「頻度が多い文字」への重み付けはしていませんから、通常の文章中での”インク使用量”と一致するかどうかはわかりませんが、フォントが違うことで「どのくらいインク使用量が異なるのか」の目安にすることはできそうです。

 右上に貼り付けた結果グラフを眺めてみると、”MS 明朝(オレンジ色)”は比較的インク使用量が少なく、”ヒラギノ明朝(緑色)”と”小塚明朝(青色)”はほぼ同じで(MS 明朝より)インク使用量が若干多い、ということがわかります。また、ひらがなとカタカナだけで計算してみた結果も、やはり同様の結果です(右グラフ)。
 …というわけで、プリンタのインク代を安くしたいなら”ヒラギノ明朝”や”小塚明朝”でなく”MS 明朝”を使うとトクする可能性が高そうです。数パーセントの違いに過ぎないかもしれませんが、3パーセントの消費税アップを吸収するくらいの代金節約を、することもできるかも!?

 (もう今更?という古い話題になってしまいましたが)佐村河内守氏が書いたという作曲指示書(右図)が、何だか妙にマメで妄想力に溢れていたことに心から猛烈に感動し(←褒め言葉のつもり)、佐村河内守氏の顔を描く方程式を作ってみることにしました。つまり、「初音ミクやアラレちゃんを描く曲線」を作るテクニックの秘密で解説した「フーリエ記述子」という技法を使って、佐村河内守氏の顔を描き出してみることにしました。

 「任意の周期関数は、三角関数を足し合わせとして表現できる」というフーリエ変換を使えば、ありとあらゆる(任意の図柄を表現する)曲線を描くパラメータ列を三角関数の足し合わせ(フーリエ級数)として表すことができます。

「初音ミクやアラレちゃんを描く曲線」を作るテクニックの秘密

 というわけで、作成してみた「両耳の聞こえない作曲家」の顔を描き出す「佐村河内守の方程式」が下の長い数式です。そして、 この「佐村河内守の方程式」を計算するとできあがる計算結果が、右の図形です。見事に、音を真摯にひたすら探求し続ける芸術家の素顔が浮かび上がっていることがわかります。

 …という記事を書き始めたのが、先月の今頃だったでしょうか。どうやら、最近の佐村河内守氏はこういう姿ではなくなってしまった、と人の噂で耳にします。長髪もサングラスも氏の顔から消えてしまったらしく、この「佐村河内守の(顔を描き出す)方程式」では、現在の氏の顔を描き出すことはできないようです。記事は「生もの」で思いついた時に書かないとダメだなぁ…と反省中の今日この頃です。