雑学界の権威・平林純の考える科学

 「大変な・ツラい場所」のシンボルとして扱われる場所のひとつが「宇宙」です。たとえば、地上を遙かに離れた宇宙空間には空気も(ほとんど)なく、人間が生きていける環境ではありません。そして、もうひとつの「大変な・ツラい場所」のシンボルが「大阪湾」です。大阪湾もやはり人間には辛い環境なので、(重しを付けられ)大阪湾に沈められてしまったりすると、私たちは生きていけないに違いありません。

 そんな、大変な場所「宇宙」と「大阪湾」に炭酸ペットボトルとドラム缶を派遣してみたら、一体どんなことになるでしょうか?たとえば、使い終わった(中身が空になった)炭酸ペットボトルを宇宙(真空)中に放り出したらペットボトルはどうなるのでしょう? また、大阪湾に(巨大な重しでも付けブクブクと)ドラム缶を沈めてみたら、ドラム缶は一体どうなるのでしょうか。

 炭酸ペットボトルを宇宙(真空)中に放り出すと、ペットボトルには容器内部の圧力と外部の圧力の差による力が働きます。 ペットボトル内部にある空気は1気圧で、外は真空で気圧はゼロということは、気圧差にして1気圧分に相当する力が内側から外側に向かって働くことになります。 しかし、炭酸ペットボトルは(炭酸飲料を中に入れている状態で破裂したりすることがないように)数気圧以上の耐圧性能を持っています。 ペットボトル外側より内側の方が圧力が高い限りは、ボトル内外で数気圧の圧力差があっても壊れることはありません(だから、ペットボトルロケットだって作ることができるのです)。 ということは、炭酸ペットボトルを宇宙(空間)に放り出したとしても、たかだか1気圧程度の圧力差では、ペットボトルは壊れたりすることはない、ということになります。

 さて、大阪湾にドラム缶を沈めたら、一体どういうことが起きるでしょうか? 大阪湾の水深データベースを見ると、大阪湾は陸地から少し離れると、すぐに水深10数メートル程度になります。 海中の水圧は、水深10mでほぼ1気圧に相当します。 つまり、大阪湾に重しを付けた空ドラム缶を沈めると、そのドラム缶に対して外から内側に向かって1気圧以上の水圧がかかることになります。

 ところが、ドラム缶は外から押される力には意外なほど弱いものです。 金属で頑丈に作られたように見えるドラム缶も、もしもドラム缶の中から空気を吸ったりすることでドラム缶の内側の方が外側より1気圧だけ低いような状態にすると、ドラム缶はその圧力に耐えきれず潰れてしまいます。 たとえば、下の動画のように、熱い水蒸気で満ちたドラム缶に封をした後にドラム缶を水で冷やしたりすると、ドラム缶内部の気圧が下がり、ドラム缶の外側にある1気圧の大気圧によってぺしゃんこになってしまいます。

 というわけで、「宇宙(真空)に放り出した炭酸ペットボトル」と「大阪湾に沈めたドラム缶」…壊れたのは「大阪湾に沈めたドラム缶」でした。この答は当たり前だったでしょうか?それとも少し意外な答えだったでしょうか?