雑学界の権威・平林純の考える科学

 スカートを履いた女性がチョコレートを取ろうとして屈んだ瞬間に、スカートがめくれ上がってしまう、という動画があります。こんな動画を眺めると、どうすれば同じようなテクニックを駆使することができるのか!…じゃなかった、どういう屈み方をすればスカートがめくれ上がらずに済むかを、調べ解き明かしたくなります。そこで、「風でめくれるスカート」の科学!「涼しく晴れた朝の地下鉄駅をドジっ娘が走る」とスカートは必ずめくれる!?の法則の時と同じように、流体力学や衣服学を駆使して「スカートめくれ」を実現する…じゃなかった防ぐための屈み方を考えてみることにしましょう。

 まずは、女性が屈み込んでいく際の動きを思い浮かべてみると、およそ2m/s^2くらいの加速度であるように思えます。2m/s^2 程度の加速度で0.5秒くらい下向きに加速して・そして残り0.5秒ほどで屈む速度が減っていき、結果として1秒ほどで50cmくらい屈み込むという具合です。このような動きをすると、腰の部分が下に向かう速度は最大で秒速約1mになります。

 次に、腰が秒速約1mで下に屈もうとする時のスカートの動きを考えてみると、スカートに働く力は重力と(下に下がっていくスカートが)スカート上下の空気から受ける抵抗です。それらふたつの力がスカートにかかっている時、一体スカートがどういった動きをするかということを、

  •   ・スカート端の直径が70cm
  •   ・スカートの重さが150グラム

という条件で計算してみると、スカートは1.1m/s^2の加速度で下へと動いていく…という結果になります。

 女性の腰が2m/s^2 程度の加速度で動いていくのに対して、(それより遅れて)スカートが1.1m/s^2の加速度で下へ動いていく、ということは、女性の腰を基準にすれば、スカートが相対的に2 – 1.1 =0.8m/s^2の加速度で めくれ上がっていく…ということになります。だから、上の動画のように、スッと屈み込もうとした女性のスカートがフワリと浮かび上がってしまったわけです。

 それでは、一体どうすれば「スカートがめくれ上がらずに済むか」というと、ほんの少しだけ屈む速度を遅くしてやれば良いのです。たとえば、上のスカート端や重さの条件れあれば、屈み込む加速度を1.8m/s^2よりゆっくりにしてやれば、スカートがめくれ上がることを防ぐことができます。

 …というわけで、「スカートめくれ」を防ぐためには、いくら美味しそうなチョコレートが落ちていたとしても、(自分のスカートの大きさや重量から計算して導かれる)一定以下の速度に保つようにするということになります。あるいは、「スカートめくれ」を実現させるためには、思わず屈み込む速度が(計算から導かれた)所定の値を上回るような魅力的な食べ物を落としておく!ということになるのです。

 森羅万象・古今東西のスカートのめくれを解き明かすことができるなんて考えると、色んな科学を勉強したくなりますよね!

 次の問題に答えてみて下さい(持ち時間10秒)。

 全10問の2択問題をデタラメに答えた時、正解数5問以上になる確率は何パーセントでしょう?

この問題、私のリサーチでは95パーセント以上が「全10問で5問以上正解なら…当然50パーセントじゃない?」と答えます。もちろん、その後、「けれど、そんな出題をワザワザするということは、そうじゃないってこと?」と訝(いぶか)しげな顔をする人も多いのですが、少なくとも最初は「50パーセント」という答が(ほぼ確実に)返ってきます。

 しかし、この問題の答は「約62パーセント」です。「全10問の2択問題をデタラメに答えた時、正解数5問以上になる確率は約62パーセント」で、五割より(かなり)高い確率で”正解数が5問以上になる”のです。…といっても、「全10問の2択問題をデタラメに答えた時、間違った答が5問以上になる確率も同じく約62パーセント」です。…そろそろ「この問題のトリック・タネ」がおわかりになったかと思います。全10問の2択問題がある時、次の3通りの状況があります。

  • A. 正解の方が多い
  • B. 正解と誤答の数が同じ
  • C. 誤答の方が多い
そして、「A. 正解の方が多い」と「C. 誤答の方が多い」は、対称性から当然「同じ数だけある」わけです。そして、「全10問で5問以上正解」というのは、「A. 正解の方が多い」に加えて「正解数(=5)と誤答数(=5)が同じ」というBの状態も含みますから、当然のごとく、「C. 誤答の方が多い」だけより「A. 正解の方が多い」と「B. 正解と誤答の数が同じ」の和の方が多くなり、50%よりも確率が高いのが”当然”です。

 実際、その確率を計算してみると(右図)、638 / 1024 ≒ 62パーセントという確率になります。 けれど、ほぼすべての人の「感覚」「印象」では、なぜか「全10問の2択問題をデタラメに答えた時、正解数5問以上になる確率は50パーセントという答」の方を自然だと感じるのです。これは、一体どうしてなのでしょうか。

 どうやら、私たちの頭の中では、「全10問のうちの5問正解という状態」は、「真っぷたつにしたときの上半分」というように誤変換されてしまうようです。「10という数字は2で割れて、2で割ると5になる」という印象が強いせいなのか、あるいは、10進数で0~9までを「四捨五入」でふたつに分けることに慣れたせいなのか…その理由はよくわかりませんが、「全10問の2択問題、デタラメな答で正解数5問以上の確率」を尋ねると、ほぼ100パーセントの人が「50パーセント!」と答えるのです。

 この問題で何より一番面白いことは、「私たちの考え方・感じ方が、この問題に(なぜか)間違った答を返したがる」ということ、そして「その理由は一体何なのだろう?」を考えてみても、その「正解」がなかなか見つからないことかもしれません。・・・あなたなら、一体どんな「理由・原因」だと考えますか? 私たちの頭の中に仕掛けられた「間違ったロジック回路」の仕組みが知りたい…とは思いませんか?

 「衛星放送を受信するためのアンテナが屋根に設置されている」というのは、よく見慣れた風景です。 衛星放送は、地球上で周回運動をしている人工衛星から電波放送が送信されるので、衛星放送を観るためには「放送衛星」の方角にアンテナを向け続けなければなりません。となると、衛星の動きに合わせてアンテナの方角を変えなければならないか?…というと、放送衛星は、赤道上空の高度約3万6千キロメートルを地球の自転と足並みを揃えて円軌道を描く静止軌道を描いていて、つまり、地球上から見ると空の一点で動かず止まっているように見えるというわけで、衛星放送受信用アンテナは「天空の(赤道の遙か上空に相当する、衛星が位置する)ある一点に向けてあれば良い、というわけです。

 こうした静止軌道を描く人工衛星の中で、最も巨大であると言われているのが米国の偵察衛星「ORION」シリーズです。 何しろ、直径が100メートルに達する…つまり、サッカー場(サッカーの競技スペース)と同じくらいの超巨大さなのです。 このORIONシリーズ、SIGINT- Signal Intelligence – 衛星で敵の通信やレーダーなどを傍受する偵察活動をしていると言われていますが、役割は謎に包まれてるものの、すでに静止軌道上にいくつも打ち上げられ地球上の「何か」を偵察し続けています。

 約7年前、アルミホイルで作った自作パラボラアンテナを使い、他者のインターネット通信機器(ルーター)から出る微弱電波を増幅してインターネット接続を行った(らしい)というインターネット・オークション・サイトへの不正接続事件がありました。 その事件で使われた「アルミホイル製の自作パラボラアンテナ」の大きさが直径30センチメートルなので、ORION衛星のパラボラアンテナ直径100メートルというのは直径にして333倍、面積にして11万倍にも達します!…ということは、もしも、直径30cmのアルミホイル自作パラボラアンテナが数百メートル離れた場所からルータに接続可能だったとしたら、ORIONなら(その11万倍程度の)赤道上空3万6千キロメートルの上空からも、あなたの自宅ルータに侵入可能かもしれません!?