自販機には「商品配置の法則」があります。
たとえば、寒い冬の日に、自販機を眺めてみれば、ほとんどの自販機では、最下段にコーヒー・紅茶などホット飲料が並べられ、その上の段には缶やペットボトルに入ったコールド飲料が並んでいることに気づかされるはずです。
つまり、もしも3段に飲料が並ぶタイプの自販機であれば、こんな風に並んでいます。
- 上段:コールド炭酸飲料(あるいはペットボトル飲料)
- 中段:ペットボトル飲料(あるいはコールド炭酸飲料)
- 下段:ホット飲料
実は、自販機の商品配置には、おおよその「決まり」があるのです。
まず、自販機の商品棚の最下段には、背の高いペットボトルは入れられない「高さ」になっていることが多いものです。
それは、最下段を(背の高いペットボトルが入るほどに)高くしてしまうと、その上にある商品位置が高くなりすぎ、ボタンが押しづらくなってしまうため、最下段の「棚」の高さはあえて低くしてあるのです。
背の高いペットボトルに入っているのは、スポーツ飲料や冷たいお茶、あるいは、水などです。
すると、スポーツ飲料・冷たいお茶・水などは、「上段もしくは(3段以上であれば)中段」に置く、ということになります。
そして、いくつもの判断が次に加わることで、冒頭に書いた「決まり」「商品配置の法則」が生み出されます。
たとえば、わかりやすさ・商品判別を容易にするために、コールド飲料はコールド飲料だけで集めたい・ホット飲料はホット飲料だけで固めたい…となると、コールド系飲料(缶・ペットボトル)は上段と中段に配置して、ホット飲料は下段に置く、ということになります。
あるいは、自販機の左下にキャンペーンポスターなどが貼ってある時には、そのポスターのすぐ上にキャンペーン商品が配置されます。
○×があたる〜といったキャンペーンと言えば誰しも連想するのは缶コーヒーのCMというくらい、缶コーヒーキャンペーンは多いものですから、
すると、最下段の右には(寒い冬なら)暖かい缶コーヒーが置かれることが多い、ということになります。
さて、今回書いたのは、「真冬の自動販売機の商品配置に関する法則」です。
たとえば、「自販機 暑い」で画像検索をした結果を眺めてみればわかるように、真夏の自販機の商品配置は、その季節の事情を反映して、また違う商品配置になっています。
たとえば、当たり前の話ですが、ホット・コーヒーなんてほとんど並ぶことはありませんし、夏バテに効きそうな小瓶に入ったスタミナ飲料が下段に並んでいたりもします。
季節折々、自販機の商品棚はその季節柄に応じた模様替えがされ続けています。
日本の街中に一番たくさんある「お店」は「自動販売機」です。
500万台もの自販機が、狭い日本列島に置かれています。
道路や交差点の片隅で、1年365日、1日24時間、開き続けている自販機という「小さなお店」の商品棚を眺めてみれば、そこには、季節の中で私たちが欲しているものが映し出されているのです。
『「教室の黒板を夕日が照らす」のは「マンガの中だけの話」です!?』で紹介した(明治時代の文部省が”学校はこのように建築すべし”と示した指導書である)「学校建築図説明及設計大要」を眺めていると、こんな興味深い「学校のトイレの(便器)数に関する決まり」が書かれていました。
便所ト生徒ノ割合 左の如シ
男:大便所 3個・小便所4個
女:大便所5個
(個数は生徒100人あたり)
あなたが通った・通っている学校のトイレも、大・小便器の数を(思い出しつつ)数えてみれば、大体これと同じくらいの数だったのではないでしょうか?
「学校建築図説明及設計大要」の便器数ルールの「とても興味深く・面白いこと」は、実は、この指導書が発行さられたのは120年近く前の明治28年(1895年)であるにも関わらず、空気調和・衛生工学会が1983年に報告書として示した「衛生器具数の設置個数の決定」と(完全にといって良いほど)同じである、ということです。
たとえば、INAXの「小・中学校トイレの適正器具数の算定法について」に掲載されている空気調和・衛生工学会が示す「適正便器数」のグラフを眺めてみましょう。
すると、明治28年に出された「学校建築図説明及設計大要」が定める便器の数は、空気調和・衛生工学会による「衛生器具数の設置個数の決定」の中でストレスを最も小さくした場合(待ち時間:大便器30秒/小便器15秒)と、なんと完全に一致するのです!
120年前の明治時代に示された「学校建築図説明及設計大要」、つまりは、それを記した山口半六・久留正道らの「まるで予言のような先見性・その正確さ」に心から驚かされます。
明日から、学校やオフィス、デパートや劇場…(人が集まる)さまざまの建物に行った時には、試しに便器の数を数えてみるのはどうでしょう?
たとえば、その便器数が空気調和・衛生工学会が示す「適正便器数」になっているかどうか確かめて・納得してみたり、あるいは、トイレの「待ち時間」が何秒かを計ってみるのです。
そして、「学校建築図説明及設計大要」の待ち時間(大便器30秒/小便器15秒)との時間勝負をしてみたりするのです。
そうすれば、イライラ・モジモジしがちなトイレの待ち時間も…少しは楽しむことができるかもしれません!?
関連記事:『法律が決める「トイレの数」は男女不平等だった!?』には、オフィスに備え付けられるべき「トイレの数」を定めた「決まり」のヒミツ・ナゾが書いてあります。
「教室の黒板を夕日が照らす」のは「マンガの中だけの話」です!?で、「窓は南側・教壇は西側になる」ように(特定用途の教室でない)普通教室は作られている…という「教室・窓の向きの決まり」を書きました。
「普通教室」という断り書き(ことわりがき)をつけた理由は、特定用途の教室は普通教室とは違う向きになるように作られることが多いからです。
普通教室とは違う向きに作られる「特定用途の教室」は、たとえば美術室です。
美術室は「北側に(も)窓が面するように作られ、(美術室の)教壇は部屋の東側に位置するように作られる」ことが多いのです。
窓の向きも・教壇(黒板や机)の向きが、(窓は南側・教壇や黒板は西側になる)普通教室と(北側に窓があり、教壇や黒板は東側というよう)美術室では逆向きになるのです。
なぜかというと、美術教室の南側に窓があり、その窓から太陽の光が強く差し込んでしまうようなことがあったとしたら、絵を描いている最中に(窓から差し込む)光が刻々と変わってしまい、絵を描くことが難しくなってしまうからです。
だから、美術室は、(刻々角度を変えたりすることがない)落ち着いた光の中で作業ができるよう、直接太陽の光が差し込むことのない「北側の窓」から柔らかな光を取り入れるように作られているのです。
そして、「北側の窓から差し込む光が、生徒が文字を書く右腕で遮られ(日本人の約9割が右利きなので)て、生徒の手元が暗くなることがないように、教壇が”東”側に作られる(ことが多い)」というわけです。
美術教室の教壇・黒板は(教室の)東側に設置される…ということは、美術室の黒板は夕日の光に照らさせることが多いような配置で作られることが多いのです。
「夕日が(今日の”日直”の名前が書かれた)教室の黒板を照らす」というマンガでよく描かれそうな風景は現実には(あまり)存在しない風景です。
しかし、「美術室の黒板」は(美術室の教室が南北両側に窓があれば)夕焼けの太陽に照らされるような配置で作られます。
たぶん、あなたが通った「学校の美術室」は校舎の最も西側に(あるいは北側に面するように)作られていて、そして教壇は(普通教室とは逆向きの)東の方角に作られていたのではないでしょうか。
…それも、太陽の方向と右利きの人が多いという理由から必然で作られる「配置」だったのです。