雑学界の権威・平林純の考える科学

右の画像は、モネがえがいた「夕日の国会議事堂」です。この絵の夕日部分を眺めると、とても眩しく明るく感じます。 けれど、よくよく考えてみると、少し不思議なことに気がつきます。夕日部分を塗っている色自体は、決して、光り輝くようなとても明るい色というわけではありません。けれど、モネ描く夕日を、私たちはとても眩しく感じているのです。

こうした現象を理解し、さらに活用するために役立つのが、グレア錯視という視覚・認知の特性を理解しておくことです。グレア錯視というのは、たとえば、暗い背景の中に明るい部分が明るい領域があり、その境界に明るさや色のグラデーションが存在していると、明るい部分をより明るく・眩しく感じる、という特性です。

たとえば、下の画像を眺めてみると、左画像の中央にある白い部が(右のグラデーションがない画像の中央白い部分より)明るく・眩しく感じられるはずです。これが、グレア錯視です。

だから、右のような夕日の周りに明るさや色のグラデーションがある写真を見ると、夕日部分の輝度は(撮影時に飽和してしまい)「ただの白色」に過ぎないはずなのに、明るく眩しく輝いているように感じられるのです。逆に言えば、明るい部分が飽和してしまいそうな状況でも、明るい部分の周りにグラデーションを写し込んでおけば、後で眺めるときにも「ちゃんと明るく感じる」ことができる、というわけです。

あるいは、カメラのレンズによるボケなどにより、輝く被写体がグラデーションを帯びつつボケた写りになる状況も多いものです。 そういった時にも、グレア錯視を意識しつつ、さらに被写体を明るく・眩しく感じさせるような仕掛けを入れてみる、ということもできそうです。

そしてまた、白いキャンパスの上に光り輝くものを描こうとした時には、軽く色や明るさで眺めるときにも色や明るさでグラデーションを付けると、白のキャンパスや白の油絵の具以上の明るさや輝きを表現することができます。…覚えておくと、これからあなたの表現力を豊かにするワザになるかもしれません。