雑学界の権威・平林純の考える科学

 トイレットペーパーには、表面と裏面があります。裏面はゴワゴワな肌触りが堅い表面で、それとは逆に表面(おもてめん)はフンワリ肌に優しい柔面になっています。表面と裏面を見た目で区別することができなくても、その表面性の違いは、たとえば指で撫でてみたりしたならば、指の先に感じる抵抗を手掛かりにして、いともたやすく区別することができます。…このトイレットペーパーの裏表の違いは、とても不幸なことに、多くの場合「裏面」がお尻表面を撫でてしまうという構造になっています。なぜかというと、多くのトイレットペーパーは、「回転面の内側に粗裏面が向くように作られている」からです。

 

 壁に設置されたトイレットペーパーを手を伸ばして自然に丸めようとすると、やってみればわかりますが、手前側に向かって丸めることになります。たとえば、下の図は、回転面の内側に「粗い裏面」が向くように設置されたトイレットペーパーが「壁に離れた側から紙が足らされている状況」で、丸める際の異なる2種の方法を描いたものですが、おそらくあなたが自然に感じる方法は前者(巻き方Aの)、外側に裏面が向く方法だと思います。そして、こんな状況下では、トイレットペーパーに手を伸ばすと、自然に「トイレットペーパーの裏面が外側に向かうように」丸められることになります。つまり、表面抵抗が大きな粗い・痛い面がお尻に面するようになってしまう側です。

 上図のような、トイレットペーパーが「壁に離れた側から紙が足らされている状況」というのは、実は日本でよくある風景です。「日本では実はよくある」ということを逆に言うならば、それは、他の国では特に自然とは限らない点ということです。他国のトイレットペーパーでは、たとえば下図のように「壁に近い側に紙が足らされている状況」であることも多く、そんな場合には、トイレットペーパーに手を伸ばし自然に紙を丸めても(それと逆向きは、実際のところ、かなり不自然な向きになります)、柔らかな「表(おもて)面」が外側を向くのです。

 というわけで、トイレットペーパーで「(いつも)お尻をゴワゴワな堅面で拭いてしまう理由」とは、それは日本では「壁に離れた側から紙が足らされている状況」が多く、そして「回転面の内側に粗裏面が向くように製造されているからです。…それがなぜかということは、(今夜ももう遅いので)次回以降の話題にでもしようかと思います。