雑学界の権威・平林純の考える科学

 今回は、「洋式小便器ではどこを狙うのが、飛沫をまきちらすことなく、一番周りを汚さずにすむか」ということと(参考記事:小便器で飛沫を飛ばさないコツは「真ん中を外した左右・水平より少し下目」を狙うこと!?)、「洋式大便器での立ちしょんべんは、なぜお勧めできない・あり得ないのか」ということを証明してみようと思います。

 まず、これまでに行われた研究、特に米国研究者らによる「小便を模した放水実験」を高速度カメラ撮影した解析結果から、

  1. ■ 小便を、壁面になるべく沿った角度であてることで
      (表面張力と壁面と小便との付着力により)飛沫が飛びにくい
  2. ■ 小便が「粒として分離した状態」で壁に当たってしまうと、
       飛沫が多量に生じてしまう

ということがわかっています。 そして、(あたかも、水をホースから出す時のように)最初は繋がって飛び出した「おしっこ」が、自身の表面張力によって、いくつもの粒として分離しまうまでには、若干の時間がかかり、モデル実験の結果から、
  1. ■ 放水口の先から5インチ(12.7cm)→ 分離しない
  2. ■ 放水口の先から10インチ(24.5cm)→ 分離してしまう
という結果が得られています。それは、20cm程度、おしっこを飛ばしてしまうと、(ぶつかった時に)必ず飛沫が生じてしまうということです。…ここまでが過去の研究結果です。

 

 それでは、これらの条件をもとにして、

  1. ■ 洋式小便器
  2. ■ (家庭によくある)洋式便器

について、それぞれ「どういう風にすれば、飛沫が飛ぶことがないのか」という最適条件を導いてみることにします。

 始めに、おしっこ(放水作業)は水平に行うのが自然だ、という事実からスタートしましょう。上に向かっておしっこをまき散らすなんて危険極まりないですし、かといって、下を狙うというのも、おしっこを出す「ホース」の構造を考えると少し不自然です。それでは、まるで極端に曲げたホースからおしっこを出すような状態になってしまいます。そこで、水平におしっこ(放水作業)を行う状態を考えます。

 おしっこの運動方程式を考えると、おしっこは放物線を描きます。X・Y座標(平面)を小便器の壁面上にとると、便器壁面に衝突する場所(高さ:Y座標、左右位置:Y座標)は、次の方程式①で表されます。

 一方、「おしっこが粒に分離して衝突して飛沫を散らす」ことがないようにするために、たとえば20cm程度が「小便が粒になってしまう」ための限界距離とすれば、(放物線上の経路・距離を楕円周長で近似し、シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの簡易近似式を使うことで)次の方程式②が得られます。つまり、おしっこで狙うべき洋式小便器上のターゲットは、小便器の壁面上にとられたX・Y座標(平面)上で、方程式②で表される「領域内」かつ方程式①の軌跡上に存在するということになります。

 さらに、「おしっこを壁面に沿った角度であてると、飛沫が生じにくい」ということを考えると、できるだけ斜めに当てた方が良い=なるべく「放水口の正面からズレた角度の箇所に当てた方が良い」とことなので、 その条件となるのは、方程式②が等号となる場合(方程式②’)となります。 つまり、方程式②’と方程式①の交点が、おしっこ飛沫を飛ばさないために、小便器上で狙うべき場所ということになります。

 そこで、ためしに、
 ・放水速度:1.0 m/s
 ・放水口と小便器壁面間の距離:16cm
という条件を設定して、方程式②’と方程式①を満たす解を求めてみると、
 ■ 水平に放水を行い、放水口正面から下に11cm、(左右どちらかに)11cmずらした地点にあてる
という「理想解」を得ることができます。そう、以前書いた記事『小便器で飛沫を飛ばさないコツは「真ん中を外した左右・水平より少し下目」を狙うこと!?』は、確かに正しかった!ということが明らかになったわけです。

 それでは、家庭によくある洋式便器については、どうでしょうか? 洋式便器に、立って用を足そうとすると、よほどの幼児でない限り、必ず「おしっこを放水する”放水口”が、便器から20cm以上離れた場所」になってしまいます。つまり、必ず「おしっこが粒に分離して、飛沫を散らす条件になってしまう」ということになり、「洋式便器では、飛沫を生じさせずに用を足す立ち小便条件の存在は否定される」という結果になるのです。その結果、必ず「座りションベンすべし!」という答が導かれてしまうのです。…家では座りションベンを強制させられている男性も多いかもしれませんが、そのルールは確かに正しい絶対的真理だった!というわけです。

 小便器で飛沫を飛ばさないコツは「真ん中を外した左右・水平より少し下目」を狙う、大便器では必ず座りしょんべんをする、ということを心がければ、おしっこ飛沫で汚れてしまうことがなくなるかもしれません。