201308.03
ゴルゴ13に学ぶ「超長距離狙撃におけるコリオリ力の影響」
世界最高のスナイパー(狙撃者)といえば、それはもちろん、「ゴルゴ13」ことデューク東郷です。何しろ、常人どころか世界中の誰にだって不可能に思える狙撃を、数限りなく成功させているのです。
たとえば、右のシーンは、遙か先、狙撃ターゲットの屋敷にあるプールに生じる波の動きを読み、波の先に弾を反射(跳弾)させて、狙撃ターゲットに命中させた、という話です。こんな不可能を可能にすることができる存在は、ゴルゴ13以外にはありえないでしょう。
このゴルゴ13、地球が自転することで生じる「コリオリの力」も計算に入れた上で、狙撃を行うと言われています*。地球自転によるコリオリ力というのは、赤道に近いほど(地球自転による)回転周速度が速いことから(北極・南極では周速度ゼロ)、緯度方向に移動する物体が軽度方向に対する力を受ける、というものです。
ゴルゴは、狙撃を行う際に、周りの風や重力が弾丸に対して働く影響を考えるなんて「当たり前」、地球の自転により生じる「弾丸曲がり」の補正まで行っているというのです。そこで、今回はゴルゴ13が行う超長距離狙撃に対する「コリオリ力の影響」を考えてみることにします。
中でも私にとって印象に残っているのは、南半球から来た暗殺者と闘うストーリーの中でコリオリの力を計算に入れて狙撃することである。
ゴルゴ13は「プロフェッショナル」と呼べるのか
ゴルゴ13は、おおよそ1km程度離れたところからの長距離狙撃を成功させます。その1km程度の狙撃を行う際、ライフルから発射される弾丸に重力とコリオリ力のみが働くとして(つまり空気抵抗を無視して)、弾丸の軌道がどのように曲がってしまうかを計算してみた結果が、下のグラフです。 ゴルゴ13が発射する弾丸の初速度は995m/sとして、左図が東京で真北を向いて狙撃を行った場合で、右図が赤道から真北を向いて狙撃した場合です(軸の単位はすべてメートルです)。グラフに描いた実線が銃弾にコリオリ力が働いた銃弾の軌跡で、点線がコリオリ力を無視した銃弾の軌跡です。
このグラフを眺めると、銃弾が南北方向に1000メートル進む間に、鉛直方向に対して5メートル落ち、そしてコリオリ力により、東京では0.8メートル・赤道では1メートルほど弾丸の軌跡が東方向に曲がってしまっていることがわかります。…なるほど、ゴルゴ13ほどの超長距離狙撃ミッションを遂行するスナイパーともなれば、弾丸に働く空気抵抗や重力だけでなく、地球の自転・コリオリ力すら考えに入れないといけなかった!というわけです。
ちなみに、ゴルゴ13は北半球と南半球で「弾丸の曲がりの違う銃身」を使い分けていた…という情報もあります。
ゴルゴ13は、その話の中で北半球で狙撃を行った後、今度は南半球での仕事を請け負うんです。そのときに、銃身の微調整を銃の修理屋に依頼するんです。
その中にこの言葉が出てきます。そうコリオリの力が。結局、北半球と南半球では銃を発射したあとの弾道が逆に曲がるということでした。
コリオリの力
しかし、これはおそらく何かの間違いでしょう。なぜかと言えば、コリオリ力が弾丸の軌跡に与える影響は、狙撃する場所の緯度だけでなく狙撃する方向にも依存しますから、「コリオリ力の影響を考えた銃身」にしようと思うと、狙撃緯度・狙撃方向に応じた銃身カスタマイズをしなければならなくなってしまうからです。…つまり、そんなカスタマイズをしようとすると、北半球・南半球に限らず、超長距離狙撃を行う際は、毎回調整をしなければならなくなってしまいます。
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*数時間ぶっ続けで、ひたすらゴルゴ13のコミックを読んだのですが、該当話を見つけることはできませんでした。…途中で意識が朦朧としていたせいかもしれません。