雑学界の権威・平林純の考える科学

 「The Five-Card Trick Can Be Done with Four Cards(ファイブ・カード・トリックは4枚のカードで行うことができる)」という論文で知った「ファイブ・カード・トリック(“five-card trick”)」が面白かったので、このファイブ・カード・トリックをマンガ「カイジ」に登場しそうな「独自ゲーム」風に紹介してみることにします。

 観客を前にした男と女がいます。この男女2人が「両思い」であるかどうか(だけ)を観客たちに対して確認をしたい、とします。「両思い」であるかどうか(だけ)を確認したいというのは、たとえば両思いでなかった場合には、それは「2人ともに相手を好きではなかったのか・あるいは片思いだったのか(ましてやどちらが片思いだったのか)」といったことが観客にはわからないようにしたい、ということです。…どちらかの片思いだと周りに知られてしまったり(ましてや片思いをしていたのが男と女のどちらかだなんて他の人たちにわかってしまったり)しないように、両思いであるか否かだけを知りたい、というわけです。

 そんな愛情確認ゲームをしたい時には、「す」カードを2枚、「き」カードを3枚用意します。それらのカードは、表には文字が書かれ、そして裏には何も描かれていません。そんなカードを、男と女に「す」カードと「き」カードを1枚づつ配るのです。そして、

①.まず男がカードを(文字が見えないように裏向きで)次のように置きます
  ・好きなら:(下から)「す」「き」の順で重ねる
  ・好きでなければ:(下から)「き」「す」の順で重ねる
②.次に「き」カードを(男のカードの上にさらに)裏向きで重ねて置き
③.さらに、そのカードの上に女が(文字が見えないように裏向きで)次のように置きます
  ・好きなら:(下から)「き」「す」の順で重ねる
  ・好きでなければ:(下から)「す」「き」の順で重ねる
④.そして、5枚のカードを(どこで切ったか誰にもわからないように)適当な場所で切り、シャッフルする
⑤.最後に、5枚のカードを、円を描くように並べて、カードを表向きにひっくり返す

ということをします。…すると、両思いなら「き」カードが3枚続けて並んでいて、そうでなければ「両思いではない」ということがわかる、というのが「ファイブ・カード・トリック(“five-card trick”)」です*。

 実際にやってみると、①②③をした段階で、両思いなら「き」が3枚続けて並びます(両思いでないと、3枚続けて「き」が並ぶことはありません)。そして、④⑤をしても、その「3枚並びの関係」は変わらないのです。しかも、両思いで無かったとき=「き」が3枚並びでなかった場合、男と女のどちらかの「片思い」だったのか(あるいは)別に片思いですらなかったのか…ということは、(男と女の本人たち以外には)わからないのです。

 「両思いか=カップル成立かどうか」を題材にしたゲームは、(昔ながらのプロポーズ大作戦的なフィーリングカップルなど)よくあります。しかし、そんなゲームの多くは両思いではなかった場合に、「片思いの状況」が周りにわかってしまうという切ない状況になったりします。…そんな哀しい状況を避けるためには、こんな「両思いかどうか」だけをヒミツに純粋に確認することができる!㊙愛情確認ゲームがお勧めかもしれませんね。

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 冒頭の「The Five-Card Trick Can Be Done with Four Cards(ファイブ・カード・トリックは4枚のカードで行うことができる)」という論文は、このゲームを「4枚のカードで行うことができる」というものです。