雑学界の権威・平林純の考える科学

 アップル社が「Macbook Pro Retinaモデル」を発売しました。 そのディスプレイに関する説明には、こうあります。

 15.4インチのディスプレイに500万を超えるピクセルを載せてみると、 その結果はまさに圧巻でした。ピクセル密度がとても高いので、 人間の目では一つひとつのピクセルを識別できないほど。

この「人間の目では一つひとつのピクセルを識別できないほど」というアップル社の宣伝文句は、もちろんアップルお得意の「誇大広告」です。

 アップルが「Retina画面」と呼ぶMacbook Pro Retina・New iPad・iPhone4の画面の画素サイズを「このくらいの視力の人なら識別することができる」という「視力換算」したものが右のグラフです。 「視力換算」というのは、通常の「使用状況=各々の機器を使う歳の観察距離」で、ディスプレイの画素(ピクセル)サイズを識別することができるかどうかを、視力の計算式を用いて(大雑把な換算ですが)算出してみた、ということです。 その結果は、こうなります。(それぞれの観察距離は、50cm,30cm,20cmとして、視力換算しています)

  • Macbook Pro Retina:視力 1.3の人なら画素が見える
  • New iPad:視力 0.9の人なら画素が見える
  • iPhone4:視力 0.8の人なら画素が見える

 ちなみに、「視力」というのは、(下に貼り付けた説明図のように)モノを眺めた時(そのモノが)どの程度の(広がり)角として見えるか・そしてその(広がり)角が識別できるかによって決まります。 「見えるかどうか」には、実際の「画素(モノ)の大きさ」だけでなく、その画素(モノ)を「どのくらいの距離から眺めるか」も重要なのです。 だから、iPhone4の画素サイズが一番細かかったとしても、iPhoneのようなスマートフォンは近くから眺められるので、「視力 0.8の人ですら(実は)画素が見える」という結果になってしまうのです。

 さて、Macbook Pro Retinaモデルは、「視力 1.3の人なら画素が見える」という結果でした。 つまり、「目が悪い」人でなければ、この程度の大きさ(ピクセルサイズ)では、「人は識別できる」のです。 解像度が高くなったといっても、実は、まだまだ解像度は(人間の視力基準で考えれば)足りていないのです。

 アップルお得意の「誇大広告」は、それにダマされず、けれど(それを)楽しむべき、なのかもしれません。 嘘を丸呑みに信じダマされるのはただのアホですが、それを冷静に眺めていてもアホな(同じ)人間であることに変わりはありません。 だとしたら、「踊るアホウに見るアホウ、同じアホウなら踊らな損々~」という阿波踊りのように、ダマされず、けれど楽しむ、というのが風流なのかもしれない、と思います。