雑学界の権威・平林純の考える科学

年も明け、新年になりました。 大晦日の夜には「年越し蕎麦(そば)」を食べた人も多かったのではないでしょうか? 細く、長〜く・健康に暮らせることを願い、蕎麦を買ってきて茹でで食べたり、あるいはお父さんやお母さんが蕎麦粉を打って、手作り蕎麦を食べたという人もいるかもしれませんね。

さて、ここで問題です。一般的に「手作業で作ってない蕎麦」を、次の中から選びなさい。

  1. 手打ち風蕎麦
  2. 手打ち蕎麦
  3. 手打ち式蕎麦


・・・「それはもちろん、”手打ち風蕎麦”に決まってる」と答えた人…ブブー!はい、その人、間違いです。

 

実は、この三択問題、「手作業で作った蕎麦」は「手打ち蕎麦」だけなのです。 つまり、「手作業で作ってない蕎麦」を選びなさいという問題なら、「手打ち風蕎麦」と「手打ち式生そば」のふたつを選ばなければならなかったのです。

…えっ?「どれが手作業で作ったかどうかなんて、一体、どこで決められてるんだ!」ですか? それは、公正取引協議会が決めた「生めん類の表示に関する公正競争規約 特定事項の表示基準第4条(PDF)」の中に、こんな内容が書かれているんです。

製麺の圧延・裁断を「全て手作業」で行うものは「手打ち」と呼び、「”全部”又は一部を機械作業で行う」ものは「手打ち式・手打ち風」と呼ぶ。


「”全部”又は一部を機械作業で行う」となれば、コストを安くするために、「全部を機械作業で行う」のが普通です。 つまり、まずほとんどの場合には、「手打ち式・手打ち風」は手作業でなく全部を機械作業で行うことで作られる蕎麦、であるのです。

 

「手打ち風」が「手打ち」でない、というのは「”風”=それっぽい」なのだから、「そうかもね」と思えるのではないでしょうか。 しかし、「手打ち式蕎麦」は「手打ち」ではないというのは、ちょっと不思議です。 それは、極端にたとえてしまうなら、「高床式倉庫」が「高床」でない(地下一階にある)みたいなイメージです。 なんだか…ちょっと意外で、とても面白いですね。