雑学界の権威・平林純の考える科学

 道路の交差点や横断歩道などには、信号機が設置されています。 「赤信号、みんなで渡れば怖くない」なんて言葉もありましたが、信号の「止まれ」の色といえば赤色です。 それでは、「前に進んでOK・渡ってOK」は何色でしょうか? 「青色」と答える人が一番多そうですが、「緑色」と答える人もいるかもしれません。 答えが分かれるのも当然で、信号の「前に進め」の「色」は、「青と緑が混じったようなビミョーな色」です。 しかも、「”前に進め”の色」が「青と緑が混じったようなビミョーな色」というのは、実は何と「日本だけの独自ルール」だったんです。

 国際的には、「信号に何色を使って良いか」という標準的なルールがあります。 それは、CIE(国際照明委員会)が出した「赤・黄・緑・青・紫・白」といった6色です。 これら6色が選ばれている理由は、「見た時に色名を簡単に判別することができるため」とか「他の色と混同するようなことがないため」といったことです。 そして、ほぼすべての国で、信号機の「止まれ」の色は「赤」で、「前に進め」の色には「緑」が使われています。

 「あれ?日本の信号には、なぜ”青と緑が混じったようなビミョーな色”が使われているんだ?」と不思議に感じるはずです。 日本も、かつては「前に進め」の信号は「緑色」である、と法規上決まっていました。 しかし、(さまざまな理由から)次第に「青っぽい色」が使われるようになり、今の法規では、「前に進めの信号」の色名は「青色」ということになっています。 そして、日本で使われる「”前に進め”の信号機色」は、「青と緑が混じったようなビミョーな色」になっています。

 CIE(国際照明委員会)の「信号機の色としては、こういう(範囲の)色を使うべし」という「色範囲」と「(日本の法規で決まっている)日本で使って良い”青信号”の色範囲」を描いてみたのが下の図です。 この図を見ると、結構面白いことがわかります。 日本の青信号の「色範囲」は、実は「国際的な”緑色”の色範囲」に重なっています。 そして、ギリギリ「国際的な”青色”の色範囲」に「重ならないように」決められています。 つまり、「日本も”前に進め”の信号色は、緑色ですよ〜。世界標準をちゃんと準拠してますよ〜。青っぽく見えても、実はこれは世界標準の”緑色”ですよ〜。だって、”青色”の範囲は使ってないですもん〜」という”言い訳”がされているわけです。 つまり、「国際的には”緑色”と主張できる(?)範囲内で、最大限”青色”っぽくした」のが、日本の「前に進め色=青と緑が混じったようなビミョーな色」という色なんです。

 最近、TPP問題などで、「国際的なルールと日本国内ルールの違い」といったことを意識することも多いのではないでしょうか? 日本の街中に溢れている「信号機の色」にも、実は(外国から見ると)日本独特のローカル・ルール(国内法規)が隠れていたりするのです。 …いつか、日本の信号機の「青色」も、多くの国が使っている「緑色」へと変わっていく(戻ってしまう)日も来るかもしれませんね。