雑学界の権威・平林純の考える科学

 タイの洪水が収まらず、被害が拡大し続けています。タイの面積は日本の1.5倍ほどですが、日本の四国の面積にも匹敵する1万数千平方kmのエリアが洪水被害にあっています。

 今現在、タイの首都バンコクですら、周囲から押し寄せる水に囲まれ・浸水被害に襲われています。日本で例えるなら、東京の「板橋」辺りにまで水が流れてきている、とそんな状況になっています。

 下の動画は、バンコクの中心部よりやや北に位置するチャトゥチャック公園近くで撮影した「洪水の先端」です。秒速数cmという「とてもゆっくり」な速さでチョロチョロと流れていく、そしてバンコク中心部へ向かう道の先へと広がっていく「水の流れ」です。

水が街に近づいてくる速度は、場所によっても時間によっても違います。時速200m(1秒に約5cmの速さ)という記事もあれば、時速2km(1秒に約50cmの速さ)という記事もあります。私が観察した箇所では、一秒間に2cm強、時速にすると約100mほどの速度で、道路を水が流れ・進んでいました。一秒間に2cmというと一見とても小さい数字に思えますが、一日あたりにすると2km強も、水が通りを埋め尽くしていくことになります。そう考えてみると、このチョロチョロと流れる水ですら、少し恐ろしく思えてきます。

 しかし、「洪水の先端」を眺めつつ、同じ洪水といっても「山国である日本における洪水」と「タイの洪水」は結構違う”存在”なのかもしれないとも思わされました。「洪水」と聞いても、私たちは「こんなにゆっくりと進んでいく水の流れ」を思い浮かべたりはしないような気がする、と何だか感じさせられたのです。私たちが思い浮かべるのは「河のどこか一箇所が決壊し、そこから水が滝のように押し寄せてくる」というようなものであるような気がします。

 今日の「観察・研究報告」は、洪水に襲われるタイの首都バンコクで見た「道路を進む洪水の先端」です。