雑学界の権威・平林純の考える科学

 地球の自転軸が太陽に対して傾いているため、夏は日が長く・冬は日が短くなります。 日(太陽が地上に昇っている昼間)が一番長くなるのが夏至で、日が一番短くなるのが冬至です。冬至は「太陽が出ている時間が一番短い」のですが、しかし、太陽が地平線から昇る「日の出」時刻が一番遅いわけではありません。たとえば、日本であれば、日の出時刻が一番遅いのは、冬至を過ぎて1月に入った頃です。…どうして、「太陽が出ている昼間の長さ」と「太陽が地平線から顔を出す時間」が一致していないのでしょうか?

 まず、最初のヒントは「そもそも、正午に太陽は真南に位置するわけではない」というものです。もしも、太陽が正午には真南にいたとしたならば、昼間の時間と日の出(や日の入り)の時間は、同じような変化をすることでしょう。たとえば、日が長ければ太陽は東の空から早い時刻に昇るでしょうし、日が短ければ太陽が昇る日の出時刻は必ず遅くことでしょう。…しかし、正午に太陽が空のどの方向に位置するかを眺めてみると、(1年の中で)時期によって、(南北方向だけでなく)東西方向にも位置が動いてるのです。たとえば、右の写真は、アゼルバイジャンで1年かけて撮影された「正午の太陽の位置」です。太陽は南の方角に見えてはいますが、8の字を描くように高さ(南北方向)だけでなく東西方向にも位置が異なっていることがわかります。正午の太陽の位置が東西方向に(1年の間に)場所を変えるとしたら、当然のことながら、東の地平線から太陽が顔を出す時刻や西の地平線に太陽が沈む時刻も、早まったり遅くなったりすることになります。だから、必ずしも「一番日の短い日」が「最も日の出時刻が遅い日」というわけではないし、最も日が長いからといって日の出時刻が一番早いわけではないのです。

 …けれど、「なぜ、正午の太陽の位置は(いつも真南ではなくて)8の字模様を描いているのだろう?」という次の疑問が沸いてくるはずです。この「正午の太陽の位置が(いつも真南ではなく)8の字模様を描く」理由を納得するためには、まず「地球の1日の長さ」を決めているのは「地球の自転」だけでなく、「地球の公転」も(意外に大きな)影響を与えているということを知る必要があります。地球の自転周期はおよそ23時間56分04秒です。…つまり、1日24時間より短い時間で地球は1回転しているわけです。それでは、24時間と23時間56分04秒の差…つまり残りの約4分の時間は何かというと、「地球が太陽を回っている公転運動の影響により、地球が余計に自転回転しないと、太陽が同じ方向には見えない。だから、太陽が同じ方向に見えるようになるまで、地球が余計に自転している時間」です。

 右上に「太陽の周りを(自転しながら)回転する地球」を描いてみました。地球が1周自転しても、その間に地球が太陽の周りを公転しているために、地球から見た太陽の方向が変化してしまい、太陽が同じ方向には見えないことがわかります。太陽が頭上の真南に見えた瞬間から、地球が自転1周して、もう少し自転しないと、太陽を再度頭上真南に見ることはできないのです。このように、太陽が(地球上から見て)空を1周する時間を決めているのは、地球の自転時間と(太陽に対する)公転の影響の両方です。

 そして「地球が太陽の周りを公転する際の速度」は季節によって異なっています。地球は太陽の周りを「楕円」軌道に沿って公転しているので、たとえば「ケプラーの法則」に書かれているように、地球と太陽の距離が近い時には公転速度が速くなり、遠いときには遅くなります。すると、地球と太陽の距離が近い近日点に近づいていくと、地表から見て太陽が同じ方向に見えるためには、(地球の公転速度が増すため)地球が余計に自転しなければなりません。それは、つまり太陽を同じ方向に見ることができるのは少し後になる(そうしないと太陽が未だ少し東側に位置してしまう)ということになります。そして、その逆に、地球と太陽の距離が遠い遠日点に近づいていくと、地球の公転速度が遅くなり、公転により地球が余計に回らなければならない時間が短くなるので、相対的に、太陽が同じ方向に見える時刻が早くなります。
 …このようにして、地球の公転軌道が楕円で、公転速度が1年の間に「速い・遅い」と変化することによる影響は、太陽が同じ方向に見える時刻を1年の間に「遅い・早い」と変化させることになります。もう少し言い換えると「同じ時刻の太陽の位置は、東→西」と動くことになります。…しかし、これではまだ「正午の太陽の位置が(いつも真南ではなくて)8の字模様を描いている」理由を納得することはできません。「8の字模様」となるためには、さらに「地球の自転軸が(太陽に対する)公転面に対して傾いている影響」を考える必要があります。

 地球の自転軸は(太陽に対する)公転面に対して傾いています。すると、地球が太陽の周りを公転することで、地表から見たときの太陽の位置が(東西方向=東←→天頂←→西)に遅れたり早まったりする程度も、地表から見た公転面の方向、太陽の(天頂に対する)南北方向の高さによって変化します。

 たとえば、赤道あたりの地表に立ち、太陽を眺めてみることにしましょう。12月くらいになると、太陽の位置が(南の空の方向に)低くなります。つまり、地球の公転面が(地上に立つ私たちから見れば)南の空の方向に傾いていきます。すると、「(地球が太陽の周りを公転運動することによる)太陽が同じ方向に見えるために、地球が余計に自転しないといけない量(右図中の青太矢印)」が減っていきます(地球の公転運動によって「地球自転による太陽の動きを妨げる方向に太陽が動いて見える量」は、地球公転運動と地球自転の「方向の重なり具合」によって変わります)。
 この「(地球が太陽の周りを公転運動することによる)太陽が同じ方向に見えるために、地球が余計に自転しないといけない量」は、(地上から見て)太陽が天頂を通過する季節に一番大きくなり、太陽の傾きが大きくなる季節に最も小さくなります。つまり、春分や秋分の時期が近づくと「(地球が太陽の周りを公転運動することによる)太陽が同じ方向に見えるために、地球が余計に自転しないといけない量」が増え、(同じ時刻を基準にすると)相対的に太陽が東の空に位置して見える(太陽の出方が遅い)ようになり、5月や11月頃が近づくと、「(地球が太陽の周りを公転運動することによる)太陽が同じ方向に見えるために、地球が余計に自転しないといけない量」が減り、相対的に太陽が西側に位置する(太陽の出方が速い)ように見えることになります。…結局のところ、1月から12月の間に、同じ時刻の太陽の位置は「→東→西→東→西」と動くことになります。

 このようにして、1月から12月の間に同じ時刻の太陽の位置は「→東→西→東→西」と動くと同時に、南北方向に対しては「→南→北」と動くので、それら2つの動きを組み合わせてみれば、「正午の太陽の位置は(いつも真南ではなくて)8の字模様を描く」ようになります。そして、太陽が地上に顔を出している時間の長さと、地球の太陽に対する公転軌道が楕円であることや地球自転軸が公転面に対して傾いていることが生み出す(同じ時刻における)太陽の東西方向の位置の変動が相まることで、日の出時刻や日の入り時刻に影響を与えているのです。この結果、私たちが住む日本あたりでは、日の出が一番遅いのは冬至のしばらく後の1月上旬になっている、というわけです。

 朝日新聞のWEBサイト、Asahi.com に「解けない問題」との付き合い方という記事を書きました。センター試験を間近に控えたこの時期に、センター試験を振り返り考えてみよう!という「Look Back センター試験」という続きものの中のひとつです。選択肢をマークシートで選ぶセンター試験を思い出してみたとき、ふと考えたことを書いてみました。試験を受ける年頃の方にも、試験を受けた頃が遙か昔になった方にも、少しだけ眺めてもらえたら嬉しいです。

 センター試験の時期になると「解けない問題ばかりだ……とりあえずマークシートを塗りつぶしておこう!」と運に任せ、マークシートをデタラメに塗りつぶした記憶がよみがえる。「次のうちから正しいものを選べ」という問題文に並べられた選択肢の数が多いと「あまり当たりそうにない」と憂鬱(ゆううつ)になり、その逆に選択肢の数が少なければ「こりゃ当たる確率が高いぜ!」と喜んだものだ。その挙げ句に…


 ……なんてことを書くと「正攻法で地道に解いた方がいい」と言われそうだ。それは確かにその通りなのだろう。数学知識を活用して選択肢の絞り込みを行うくらいなら、最初から問題を正攻法で解くことに力を費やした方がいいに違いない。たぶん、それがきっと正しいことなのだろう。しかし…

 今回は、「洋式小便器ではどこを狙うのが、飛沫をまきちらすことなく、一番周りを汚さずにすむか」ということと(参考記事:小便器で飛沫を飛ばさないコツは「真ん中を外した左右・水平より少し下目」を狙うこと!?)、「洋式大便器での立ちしょんべんは、なぜお勧めできない・あり得ないのか」ということを証明してみようと思います。

 まず、これまでに行われた研究、特に米国研究者らによる「小便を模した放水実験」を高速度カメラ撮影した解析結果から、

  1. ■ 小便を、壁面になるべく沿った角度であてることで
      (表面張力と壁面と小便との付着力により)飛沫が飛びにくい
  2. ■ 小便が「粒として分離した状態」で壁に当たってしまうと、
       飛沫が多量に生じてしまう

ということがわかっています。 そして、(あたかも、水をホースから出す時のように)最初は繋がって飛び出した「おしっこ」が、自身の表面張力によって、いくつもの粒として分離しまうまでには、若干の時間がかかり、モデル実験の結果から、
  1. ■ 放水口の先から5インチ(12.7cm)→ 分離しない
  2. ■ 放水口の先から10インチ(24.5cm)→ 分離してしまう
という結果が得られています。それは、20cm程度、おしっこを飛ばしてしまうと、(ぶつかった時に)必ず飛沫が生じてしまうということです。…ここまでが過去の研究結果です。

 

 それでは、これらの条件をもとにして、

  1. ■ 洋式小便器
  2. ■ (家庭によくある)洋式便器

について、それぞれ「どういう風にすれば、飛沫が飛ぶことがないのか」という最適条件を導いてみることにします。

 始めに、おしっこ(放水作業)は水平に行うのが自然だ、という事実からスタートしましょう。上に向かっておしっこをまき散らすなんて危険極まりないですし、かといって、下を狙うというのも、おしっこを出す「ホース」の構造を考えると少し不自然です。それでは、まるで極端に曲げたホースからおしっこを出すような状態になってしまいます。そこで、水平におしっこ(放水作業)を行う状態を考えます。

 おしっこの運動方程式を考えると、おしっこは放物線を描きます。X・Y座標(平面)を小便器の壁面上にとると、便器壁面に衝突する場所(高さ:Y座標、左右位置:Y座標)は、次の方程式①で表されます。

 一方、「おしっこが粒に分離して衝突して飛沫を散らす」ことがないようにするために、たとえば20cm程度が「小便が粒になってしまう」ための限界距離とすれば、(放物線上の経路・距離を楕円周長で近似し、シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの簡易近似式を使うことで)次の方程式②が得られます。つまり、おしっこで狙うべき洋式小便器上のターゲットは、小便器の壁面上にとられたX・Y座標(平面)上で、方程式②で表される「領域内」かつ方程式①の軌跡上に存在するということになります。

 さらに、「おしっこを壁面に沿った角度であてると、飛沫が生じにくい」ということを考えると、できるだけ斜めに当てた方が良い=なるべく「放水口の正面からズレた角度の箇所に当てた方が良い」とことなので、 その条件となるのは、方程式②が等号となる場合(方程式②’)となります。 つまり、方程式②’と方程式①の交点が、おしっこ飛沫を飛ばさないために、小便器上で狙うべき場所ということになります。

 そこで、ためしに、
 ・放水速度:1.0 m/s
 ・放水口と小便器壁面間の距離:16cm
という条件を設定して、方程式②’と方程式①を満たす解を求めてみると、
 ■ 水平に放水を行い、放水口正面から下に11cm、(左右どちらかに)11cmずらした地点にあてる
という「理想解」を得ることができます。そう、以前書いた記事『小便器で飛沫を飛ばさないコツは「真ん中を外した左右・水平より少し下目」を狙うこと!?』は、確かに正しかった!ということが明らかになったわけです。

 それでは、家庭によくある洋式便器については、どうでしょうか? 洋式便器に、立って用を足そうとすると、よほどの幼児でない限り、必ず「おしっこを放水する”放水口”が、便器から20cm以上離れた場所」になってしまいます。つまり、必ず「おしっこが粒に分離して、飛沫を散らす条件になってしまう」ということになり、「洋式便器では、飛沫を生じさせずに用を足す立ち小便条件の存在は否定される」という結果になるのです。その結果、必ず「座りションベンすべし!」という答が導かれてしまうのです。…家では座りションベンを強制させられている男性も多いかもしれませんが、そのルールは確かに正しい絶対的真理だった!というわけです。

 小便器で飛沫を飛ばさないコツは「真ん中を外した左右・水平より少し下目」を狙う、大便器では必ず座りしょんべんをする、ということを心がければ、おしっこ飛沫で汚れてしまうことがなくなるかもしれません。