「知っているとトクする裏ワザ」紹介は、TV番組でもネットまとめ記事でも、定番中の定番です。裏技を知っていればいつか役に立つこともあるかもしれないし、あるいは、裏ワザを使わなかったとしても、それを話のネタにして楽しめるかもしれない、というわけです。実際のところ、数々ある裏ワザ中で現実に役立つことというのは意外に少ないものです。なぜかと言えば、普通に役立つのであれば、それは「裏」ワザなんて役回りでなくて、社会常識の必須知識なお得ワザになっているはずです。…だから、つまりは「あまり役立たないけれど面白いこと」を言い換えたものが「裏ワザ」と呼ばれるエトセトラになるわけです。
そんな実際のところ役に立たないものばかりの「知ってトクする裏ワザ」の中で、これは意外に使えるかも!?と(裏ワザの科学解説をした際に)思わされた裏ワザが、今回の記事で紹介する「汗ばんだ時、顔の油テカリを拭き取りつつ、ついでに(拭き取ることで失われた)油補給をする…ことを約20円で済ませる裏技ワザ」です。
もしも街中で汗ばみ・顔がテカリ始めたら…そして、その顔の油テカリを抑えたいと思ったなら、コンビニに入り株式会社やおきんのスナック菓子「うまい棒」を2本買いましょう。うまい棒1本だけを買ったならシールを貼られてお終いでしょうが、うまい棒2本を買うと、うまい棒は白いレジ袋にを入れて渡されます(うまい棒2本にシールをそれぞれ貼る…ということはなかなかできませんから)。そこで、コンビニを出たらすかさず、顔表面をレジ袋の表と裏で抑え拭くと、油を見事なまでに取ることができるのです。
なぜかというと、白いレジ袋はずエチレンが直鎖状に結合した高密度ポリエチレンで作られていて、その表面は極性も少なく油に比較的なじみやすい上に、さらに、その表面はザラザラとしているものが多いのです。表面がザラついているということは、表面に大小の凹凸がたくさんついていて、表面積が多いということになります。たとえば、右の写真は、高密度ポリエチレンのレジ袋表面を顕微鏡で撮影したものですが、(表面の反射具合などを見ればわかるように)表面は平滑ではなくて、粗く凹凸が付いていることがわかると思います。つまり、この凹凸を持つ表面に、油をたやすく(比較的)多量に吸着させることができるというわけです。
コンビニであぶらとり紙を買うと200円くらいするものです。しかし、高密度ポリエチレン製の白レジ袋を脂取り紙代わりに使えば、およそ表面積にして(裏表合わせて)2000平方cmほどにもなる超巨大な脂取り紙を、たった20円で(しかもうまい棒2本付き)で手に入れることができる…というわけです。もちろん、拭顔表面を拭き取ったことで失われた油分は、うまい棒を食べれば十分補うことができますから、お値段十分の一の超コストパフォーマンス高のお得な裏ワザが、「顔がテカったら、コンビニに入ってうまい棒2本を買う…という裏ワザ」というわけです。
「知ってトクする裏ワザ」は役に立たないものばかりです。しかし、そんな中でも「これは意外に使えるかも!?」と一番思わされた裏ワザが、今回ご紹介のテクニックです。えっ、「これだって、使うにはかなり微妙じゃないの?」という言葉も聞こえてきそうですが、これを役立だて・使うことができることができるかどうか…それはあなた次第です。
デジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像は、色彩を協調して色鮮やかに変えてみたり、陰影を強調することで起伏をわかりやすく画像処理することが今では一般的になっています。かつて、フィルムカメラを使っていた頃は、そんな処理を実現するためには、暗室の中での作業をする必要がありました。だから、現実的には、そんなことをするのは、ごく限られた人たちだけでした。…しかし、今ではそんな画像加工は誰でもできる一般的なことになっています。
今は、景色などを撮影した写真を眺める機会も多いものですが、漫画やアニメーションの画など、イラストレーション画像を眺める機会も多いものです。しかし、そんなイラストレーション画像に対しては、未だ画像処理を掛けることは一般的になっているとは言えません。そこで、今回は「アニメ的な画」に対して画像処理を掛けて、より立体的・リアルにしてみることにしました。…ちょうど、Tweetでアニメ絵が流れてきたので、そのアニメ絵から立体形状・キャラクターの表面形状や表面の向きを簡易的・擬似的に算出した上で、その情報を使って光の反射や陰影を合成し、つまりは、アニメ画像を「リアル」にする画像処理をしてみることにしました。処理内容は、「色調・明度から、同じような色領域を塊として滑らかな・丸っこい立体形状を作り出し、その形状が作り出す陰影やハイライトを(元のアニメ画に)合成することで、立体的に陰影豊かに見せる」というものです。
そんな処理結果の一例が、右に貼り付けた2枚の画像です。左の画像は、tweetで流れてきた画像で、右画像がアニメ絵の立体形状・キャラクター表面形状(向き)を簡易的・擬似的に算出して、光の反射や陰影を合成してみた画像です。処理前後の画像2枚を見比べてみれば、ある意味で平面的だったアニメ絵を、立体的に3次元凹凸を強調した効果を確認することができると思います。キャラクターの腕・胸・腰・太もも…といったキャラクターの各パーツが、陰影豊かに、リアルにモリモリと手前に盛り上がっているさまが見えてくるのではないでしょうか。色鮮やかで立体的に見えるものが理想の画像だとしたならば、これはまさに理想の2次元像に違いありません。…ん?理想の立体的に盛り上がる2次元像…?…これは何だかおかしいぞ…?
…考えてみれば、2次元世界に描かれたアニメ画の魅力は、決して3次元世界の立体性や陰影ではないような気もします。ということは、リアルに陰影豊かに立体的にしてみたところで、それはアニメ絵の魅力を増しているのではないようにも思われます。そんな落とし穴に気づくことなく、今回はとても本末転倒な作業をしてしまい、最後には、一種の「服脱がし画像作成ゲーム」みたいなことをしてしまったような気がします。
とはいえ、普通の画像や風景やリアル3次元の人物ポートレートだけでなく、アニメ画に対する画像処理って少し面白いような気もします。色んな絵描きさんの手癖や好みを真似た画像処理・レンダリングを行うことで、雰囲気ある2次元アニメ画を作り出すのも楽しそうですし、キャラクターが着ている服のテカリや光模様をさらにリアルに強調するのも面白そうな気がします。
先端に穴を開けた段ボールや筒の中に煙を入れて、さらに空気(煙)を瞬間的に押し出すことでドーナッツ上の煙を発射するこども向け実験の定番ネタがあります。「空気砲」とでんじろう先生が名付け広まったこの現象は、ボルテックスリング(渦の輪)と呼ばれるもので、タバコの煙を口から小刻みに押し出すことでも作り出せたりします。
ボルテックスリングを作ろうとするとき、段ボールやハサミを使って工作で作るにしても、たばこの煙を使って自分の口で作るにしても、
どんな風に空気を押し出せば「ドーナッツ状のリング」が形作られるののかがわからないと、「どうやれば良いのか」悩んでしまったりするものです。そこで、今回はコンピュータシミュレーションを使って、「ボルテックスリングを作るコツ」を研究してみることにしました。
どのようなことを行うかというと、まず煙を入れた空気砲やタバコの煙を含んだ口を考えて、そこから空気(煙)を短く押し出した時、その煙や周りの空気がどのように動くかということを流体シミュレーションにより明らかにしてみるのです。たとえば、右図で口の先に半透明で重ねた領域で、ナヴィエ・ストークス方程式を数値的に解いていくことで、一体どのような空気流が生じるかを眺めてみよう!というわけです。
というわけで、コンピュータで数値計算をしてみた結果が、下の2枚の動画です。これらはいずれも口から吹き出した空気の動きを、断面で描いたものです。また、左下は、空気(煙)を適度に短く吹き出した場合で、右下は空気を(左にくらべるとほんの少し)長く吹き出した場合です。この2枚の動画を比べてみると一目瞭然ですが、左の適度に”短く”吹き出した場合には綺麗にドーナッツ状の煙ができていますが、右の(ほんの少し)長く吹き出した場合には、輪っかとはならずに煙の塊がただ進んでいくような具合になっていることがわかります。
空気を適度に吹き出した場合(左)と空気を長く吹き出した場合(右) (クリックで拡大)
どうしてそうなるかというと、適度に短く空気を吹き出すと、吹きだした煙に引きずられた周囲の空気が、吹き終えた直後の煙の後ろ側に回り込み、ちょうど煙が作るドーナッツの穴の中に周囲の空気が入り込むように動き始めるからです。それに対し、煙を吹き出す時間が長すぎると、周囲の空気が煙の後ろ側に回り込むことができず、煙や空気がドーナッツ状に渦を作ることができなくなってしまう、というわけです。
つまり、綺麗なボルテックスリング、華麗な空気砲やタバコ煙のドーナッツを作り上げるためには、「押し出した空気が回り出す周期より少し短いくらいの時間だけ、瞬間的に空気を吐けば良い」ということがわかるのです。吐きだした煙が尾を引くように長ければ、もっと瞬間的に空気を押し出した方が良いし、煙がほんの少ししか見えないようであれば、もっと強く長く吐きだした方が良い、というコツが見えてきます。さらに具体的に言えば、吐き出す空気の速度と煙が進む速度差イコール煙が作る「渦の速さ」になるので、煙の輪っかの(渦方向の)周長を、「渦の速さ」で割った時間だけ空気を吐き出せば良さそうだ…という概算ができる、ということになります。
ちなみに、左上の「空気の押し出し方」で生じている現象がわかりやすいように、空気の動く方向や速さ(速度)を重ねてみると、下の動画のようになります。これを見れば、煙の周りを囲うように渦巻いている空気の流れがわかりやすいかもしれません。
コンピュータシミュレーションを使うと、実際の実験ではなかなか見ることができない姿を眺めることができたりするものです。というわけで、今回は空気砲やたばこの煙で作るドーナツの秘密を、コンピュータシミュレーションにより眺めてみました。