雑学界の権威・平林純の考える科学

 ジェット機が飛行場に着陸する直前、ウィーンという音をさせながら、翼の前後部分を伸ばし・広げていくきます。 その前後に伸ばされていく翼を眺め、「何だか隙間が大きく空いてるけど、本当に大丈夫かこの機体…。もしかして着陸失敗したりしないかなぁ…?」と感じて思わず不安になったことがある人も多いのではないでしょうか。 …しかし、実は飛行機が着陸時に伸ばす延長翼は隙間が空いている方が良いのです。

 飛行機は翼の上下の圧力差から空に浮かび上がろうとする・上に向かう揚力を得ています。 この揚力は、飛行機の速度が遅くなると小さくなるので、速度を遅くする着陸時には、機体の後ろを下げ気味にして・翼が風を大きく受けるような体勢をとります。すると、 飛行機の速度が遅くても、高い揚力を得ることができます。 しかし、その一方で「失速」が起きやすくなります。 失速というのは、翼の上面に沿って空気が流れなくなってしまうことで、飛行機を持ち上げようとする翼の揚力が失われる現象です。もちろん、失速したら、飛行機は空中に浮かんでいることができず、下に降下(運が悪ければ墜落)してしまいます。

 私たちが一見すると壊れているんじゃないか?と思ってしまいがちな、「隙間が大きく空いているように見える翼」は、この恐ろしい失速を防ぐために「隙間を空けている」のです。どういう仕組みかというと、翼に空いた隙間の間を通過した空気は、隙間を通過した後も翼上面に沿って流れるという性質(コアンダ効果)があります。このコアンダ効果を使うことで、つまり、翼に空いた隙間を通った空気が翼上面に沿い流れるようにすることで、「翼に沿って空気が流れなくなる」ことを防ぐ=飛行機の失速を防ぐわけです。

 たとえば、下に貼り付けた翼周りで流れる空気を可視化した映像を見れば、翼の角度が立ってくると空気流が(翼から)剥離してしまうのに対して、翼の前後に隙間が空いていると、その隙間を通り抜けた空気が翼上面に沿って流れ、失速を防ぐことができていることがわかります。

 飛行機が着陸時に伸ばす延長翼は、隙間が(心理的に)大きく見えて・心配になってしまったりしますが、意外なことに「隙間がある」方が実は良いのです。…次の飛行機の着陸に「隙間のある翼」を見たら、今度は心配でなく「安心」することができるかもしれないですね!

 「短いスカートが身体に悪影響を与えることが科学的に証明されました。」というポスターを、学校の構内で見かけました。 ポスターの内容は、「(膝位置より15cm短い)短いスカートは体温低下を生じさせ、体温低下は免疫低下や血圧上昇を生じさせる」というものです。このポスター、「短」「悪」という2文字が強調されていて、短いスカートを履いた瞬間、悪の組織から恐怖の毒電波が飛んでくる…ような感覚に陥ります(特に右下のポスターは、悪の組織に誘われ・地球征服の手先にされてしまいそうな雰囲気です)。

 スカート丈が短ければ、身体の露出面積は増えますから(「スカート丈の長短が衣服気候へ及ぼす影響について 聖徳栄養短期大学紀要 3, 27-31, 1971-03-20」によれば、身体の被覆率は、(半袖状態の)膝丈スカートで63%、膝上10cmスカートで57%、膝上20cmで52%となっています)、気温が低かったり・風を受ける状態では、短いスカートを履くと、身体から多少なりとも熱が奪われてしまうことでしょう。だから、寒い日には短いスカートは身体に優しくない…というのは、とても自然な話です。

 しかし、寒い日には短いスカートは(身体が冷えて)身体に悪いということだとすると、「寒くない暑い日であれば、短いスカート丈の方が身体にいい」ということにもなりそうです。
 たとえば、「(以前作成した)世界各国で調査された「気温と(その時期の衣服による)肌の被覆率」によると、気温が25℃なら肌被覆率は60%くらい、30℃なら50%ほどです。つまり、気温が暑くなると、衣服で身体を覆わず・露出するのが普通になります。
 このデータをスカートだけに適用してみると、気温25℃ならスカート丈は膝上5cmくらい、気温30℃ならスカート丈は膝上20cm強くらいでも自然かも…ということになってもおかしくありません。

 だから、コンクリートジャングルな日本の大都市で、夏の暑さが厳しくなっていく未来には、「長いスカートは身体に悪影響を与えることが科学的に証明されました」というポスターが学校港内に張られていたりするかもしれません。

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 …それにしても、私が中学の時代には、「長いスカート」が「不良・スケバン」の象徴・悪の象徴とされていました。それとは逆に、今の時代は「短いスカート」が悪とされている…というのは、何だか不思議な心地です。

 小便器におしっこをすると、意外なほど多くの飛沫が周りに飛び散ります。 飛沫が便器の外に跳ねて床を汚すことも多いですし、(放水作業にいそしむ)自分の服に跳ね返る(いわゆる誤爆してしまう)ことも多いものです。 そこで、そんな時に役立つワンポイント豆知識、小便器で飛沫を飛ばさないコツを考えてみることにします。

 街中の施設中にある小便器に、小便を狙うための「ターゲット」が貼り付けられていることがあります。 たとえば、右上の写真の小便器をよく見ると、向かって左下あたりに「ターゲット」シールが貼られています。 つまり、「この位置に放水作業をすれば、飛沫が飛びにくく、周りを汚しにくい」という位置が、狙いを付けやすいようにマーキングされていたりします。このマーク、貼り付けられている位置を観察してみると、小便器の(左右方向)中央でなく、規則正しく中央からズレた位置に貼り付けられていたりします。これは偶然なのでしょうか?

 いえ、それはもちろん偶然ではありません。この「小便ターゲット」の開発元の「使用方法(シールの貼り付け方)」(例:右に貼り付けた画像)を眺めると、「真ん中を外した、真ん中から1インチ(約2.5cm)左右にずらした位置」に貼り付けるようにとの指示が書かれています。 実はその場所こそが、一般的に、小便の狙いをつけたとき飛沫が周りに飛び散りにくい位置なのです。

 小便が便器に当たった時の飛沫を少なくするためには、「小便が便器に衝突する時、小便が便器壁面に沿った角度で壁面に当たること」が必要になります。そうでないと、壁面に衝突した水滴が、壁面や周囲の水滴から離れてしまい、周りに飛沫として散らばってしまいます。すると、左右方向に関しては、小便を壁面に真っ正面から当てるより、左右に(放水器を)振った方が壁面に対してなだらかに当てることができます。その一方、あまり大きく左右に外れた方向を狙うと、「放水の先が広がり・ハズれ飛沫が増えて」しまいます。だから、左右方向に関して、おしっこで狙う箇所は、真ん中から少し左右に外れた箇所、となります。

 そして、放水の垂直方向も、放物線を描くおしっこが「小便が便器壁面に沿った角度でなるべく(安定して)壁面に当たること」と「放水の先が広がり・ハズれ飛沫が増えないようにすること」を考えると、「水平より少し下目」を狙うのがベストチョイスとなります。だから、左右方向と垂直方向を合わせると、小便器で飛沫を飛ばさないコツは「真ん中を外した左右、そして水平より少し下目」を狙うことだ!となるわけです。

 あなたが男性なら、トイレに入った時、小便器に「ターゲット」が張ってあれば「張り位置」を確認してみたり、ターゲットがなければ、「真ん中を外した左右・水平より少し下目」を狙うようにしてみると良いでしょう。そして、あなたが女性なら、こんな「あなたの知らない世界」を楽しんでみるのはいかがでしょうか。

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参考:Blenderによる水が壁面と衝突するシミュレーション例:, ,