雑学界の権威・平林純の考える科学

 デジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像は、色彩を協調して色鮮やかに変えてみたり、陰影を強調することで起伏をわかりやすく画像処理することが今では一般的になっています。かつて、フィルムカメラを使っていた頃は、そんな処理を実現するためには、暗室の中での作業をする必要がありました。だから、現実的には、そんなことをするのは、ごく限られた人たちだけでした。…しかし、今ではそんな画像加工は誰でもできる一般的なことになっています。

 今は、景色などを撮影した写真を眺める機会も多いものですが、漫画やアニメーションの画など、イラストレーション画像を眺める機会も多いものです。しかし、そんなイラストレーション画像に対しては、未だ画像処理を掛けることは一般的になっているとは言えません。そこで、今回は「アニメ的な画」に対して画像処理を掛けて、より立体的・リアルにしてみることにしました。…ちょうど、Tweetでアニメ絵が流れてきたので、そのアニメ絵から立体形状・キャラクターの表面形状や表面の向きを簡易的・擬似的に算出した上で、その情報を使って光の反射や陰影を合成し、つまりは、アニメ画像を「リアル」にする画像処理をしてみることにしました。処理内容は、「色調・明度から、同じような色領域を塊として滑らかな・丸っこい立体形状を作り出し、その形状が作り出す陰影やハイライトを(元のアニメ画に)合成することで、立体的に陰影豊かに見せる」というものです。

 そんな処理結果の一例が、右に貼り付けた2枚の画像です。左の画像は、tweetで流れてきた画像で、右画像がアニメ絵の立体形状・キャラクター表面形状(向き)を簡易的・擬似的に算出して、光の反射や陰影を合成してみた画像です。処理前後の画像2枚を見比べてみれば、ある意味で平面的だったアニメ絵を、立体的に3次元凹凸を強調した効果を確認することができると思います。キャラクターの腕・胸・腰・太もも…といったキャラクターの各パーツが、陰影豊かに、リアルにモリモリと手前に盛り上がっているさまが見えてくるのではないでしょうか。色鮮やかで立体的に見えるものが理想の画像だとしたならば、これはまさに理想の2次元像に違いありません。…ん?理想の立体的に盛り上がる2次元像…?…これは何だかおかしいぞ…?

 …考えてみれば、2次元世界に描かれたアニメ画の魅力は、決して3次元世界の立体性や陰影ではないような気もします。ということは、リアルに陰影豊かに立体的にしてみたところで、それはアニメ絵の魅力を増しているのではないようにも思われます。そんな落とし穴に気づくことなく、今回はとても本末転倒な作業をしてしまい、最後には、一種の「服脱がし画像作成ゲーム」みたいなことをしてしまったような気がします。

 とはいえ、普通の画像や風景やリアル3次元の人物ポートレートだけでなく、アニメ画に対する画像処理って少し面白いような気もします。色んな絵描きさんの手癖や好みを真似た画像処理・レンダリングを行うことで、雰囲気ある2次元アニメ画を作り出すのも楽しそうですし、キャラクターが着ている服のテカリや光模様をさらにリアルに強調するのも面白そうな気がします。