雑学界の権威・平林純の考える科学

 一万円札には、古くは聖徳太子、1984年からは福沢諭吉の肖像画が描かれています。 現在発行されている一万円札(平成十六年十一月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、 五千円及び千円の様式を定める件で定められています)には、和服姿に(叩くと文明開化の音がしそうな)洋風髪型の福沢諭吉が描かれています。この一万円札の福沢諭吉を、赤外線で眺めると、まるで「チョンマゲ頭の福沢諭吉」が見えてくることをご存じでしょうか?

 赤外線で一万円札の福沢諭吉部分を撮影してみたのが、右の写真です。…赤外線で眺めると、ふつうの(私たちが目にすることができる)可視光で眺めた福沢諭吉とは大きく異なる姿が浮かび上がってきます。散切り姿の頭頂部頭髪が消えて、まるでチョンマゲ姿のような福沢諭吉の姿が見えるのです(参考:江戸幕府時代のチョンマゲ姿の福沢諭吉)。

 これはもちろん、紙幣偽造防止のために、福沢諭吉部分には(まるで全く同じような色に見えても)実は部分毎に赤外線の吸収(透過)度合いが異なるインクが使われているからです。だから、赤外線の目で一万円札を眺めると、諭吉の(向かって)右の部分も「真っ白」に見えますし、頭頂部は(本来は洋風の散切り頭のはずなのに)チョンマゲ姿に見えてしまう、というわけです。一件ホンモノそっくりな偽一万円札を作ったとしても、赤外線で眺めれば「(極端に言うと)チョンマゲ姿じゃないから、どうみても偽札だ!」とわかってしまうわけです。

 可視光で眺める世界と、赤外線で眺める世界は、意外なほど大きく違います。私たちが手にする一万円札に描かれている福沢諭吉先生も、赤外線で眺めると、文明開化の明治時代から、江戸時代のチョンマゲ姿に装いを変えるのです!