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 港に泊まる大型船の舳先には錨(いかり)がぶらさがっています。
そんな錨を見て、こんな疑問を感じたことはないでしょうか。


「海の底から錨が抜けなくなり、船が錨を下ろした場所から動けなくなってしまうことはないのだろうか?」

 たとえば、海辺で釣りをする人たちが海に下ろす釣り竿の先は「釣り針(はり)」がぶら下がっています。
釣り針が海底に引っかかり・外れなくなってしまうことがありますが、それと同じように、錨(いかり)が抜けなくなり・錨を下ろした大型船が動けなくなってしまうことはないのでしょうか?

 実は、錨が引っかかってしまうような場所では、大型船は錨を下ろすことはできません。
錨を下ろすことができるのは海底が泥や砂で覆われている場所で、たとえば岩場のような場所には錨を下ろせないのです。

 こう書くと、錨がしっかり引っかからないような場所で錨が船を支え・止めることができるか?と不思議に思われるのではないでしょうか。
実は、大型船を留めているのは、海底に刺さる錨(だけ)ではありません。
錨を下ろした大型船を繋ぎ止めているのは、海底に打たれた錨の力が半分で、もう半分は錨までに至る鎖なのです。
鎖が海底に長く下ろされ、その鎖の重量・抵抗が錨と力を合わせることで、船を止めているのです。


 錨の数や重さは、船の種類で決まっています。
たとえば、鋼船規則で(両舷に)1トン弱の錨を持つ船は、660メートルの鎖を備えることになっています。
そして、1トンの錨は最大で1トン×3=3トンの重量に相当する程度の力を発揮します。
一方、海底に下ろされ(海底に横たわる)鎖の長さは例えば500メートル程度になります。
そして、その長さに相当する鎖の重量は3トン程度になり、この重量の鎖に働く海底との抵抗力は(およそ)3トン×1弱=3トン程度です。

 つまり、船が錨を下ろしている時、錨と(錨をぶら下げる)鎖が同じくらいの大きさの(船をその場所にとどめるための)力を発揮しているというわけです。

 いかにも、「力強そうな錨の形状」を見ると、嵐の中で船を守っているのは錨だけにも思えてしまいます。
しかし、実は「錨に繋がる長い鎖」も人知れず・けれど力強く船を支えているのです。