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 今年8月8日、「中国の実業家が2年間かけて作った”ノアの方舟”を使い、その衝撃低減能力などの実証公開実験が行われ見事成功した!」というニュースが流れました。

 中国義浙江省烏市の承認・楊宗福さんが2年間をかけて「ノアの方舟」を製作した。発生するだろう地球の災難に対応するためだ。8月8日、楊さんが自作した「ノアの方舟」に入り、ほとんど垂直の50メートルの山の斜面から池に落ちて、人々に自分の発明成果を披露した。
 この直径4メートルのオレンジ色の大きな丸いボールは、重さは6トン、水面で33トンを積載可能。
 最も外側の層には、振幅減衰保護層を設計した。4層の3.5ミリメートルの鋼板で…300個の高強度の衝突吸収スプリングおよび75個のエアバックを設置。これらの装置は350トン程度の衝突を解消可能だ。トラックを時速100kmでノアの方舟にぶつけても、中にいた人は全然振動を感じなかった。

 このノアの方舟、限りなく夢に満ちていて・本当に心から楽しめるのですが(日本が誇るリアクション芸人である出川哲郎さんをぜひとも搭乗させて欲しいものです)、科学してみると「色々解せないところ」もあります。そこで、今回は、中国市民が作り上げた「ノアの方舟」を科学してみることにしました。

 まず、重量6トンだという球形「ノアの方舟」が時速100kmで走り来るトラックとぶつかったならどうなるでしょうか?…トラックの重量は最低でも2トンくらいはありますから、もしもトラックとノアの方舟が弾性衝突したとして計算すると、「ノアの方舟」は衝突直後には時速50kmではじき飛ばされてしまいます。ちなみに、重量2トンのトラックは方舟とは逆の方向に同じく時速50kmで跳ね返るような大事故です。
 この衝突が、「(ノアの方舟の)中にいた人は全然振動を感じなかった」という状態で済むとは…とても思えません。もしも、「中にいた人は全然振動を感じなかった」としたら、その人は衝突直後に、すでに振動といったものを感じない状態になってしまっていたのかもしれません。それはつまり、(…以下省略)

 そしてまた、「水面で33トンを積載可能」とありますが、直径4メートルの球が得ることができる水中での浮力は最大でもキッカリ・ポッキリ33トンになります。なぜなら、直径4メートルの球の体積に相当する水の重さが33トンであるからです。ということは、ノアの方舟自体の重量が6トンであることを考えると、もしも33トンの人や物資を積載したりしたらば、ノアの方舟の重量はトータル6+33=39トンになってしまいます。しかし、浮力は33トン分しか得られないということは、ノアの方舟は「水に浮くことができない」ということになります。つまり、「方舟(はこぶね)」という名前に反して、このノアの方舟は、水底にただひたすらに沈む金属球体と化してしまうのです。

 中国市民が作り上げた「ノアの方舟」を科学してみると、「ノアの方舟」が「水に浮かばない船」だったり、方舟がイキナリ時速50kmではじき飛ぶはずの状況下でも「中の人は何も感じない」といった「アレ?ん?」といった微妙な違和感も満ちています。…しかし、その違和感以上に、何より面白く・楽しさが満ちあふれているニュースであることも確かです。